「じゃあ、もっと会おうか」
「…?」
「お互い会いたいと思ってるなら、文字通り会えば良いよな。俺、これからは遠慮せずにもっと誘うから。あ、もちろん仕事の邪魔はしないし、矢野さんが疲れてそうな時は無理に誘わない」
ニコニコしながら衝撃的な事を口にする彼は、さっきまでとは違って生き生きしてるように見える。
「だから矢野さんも会いたくなったら言って?理由が無くても」
そう言い切った彼の顔は、見れば見るほど整っていてキラキラ輝いていて、自信に満ち溢れていた。
「っ…、はい!」
私はきっとこの夜のことをこれから先忘れない。
お互い核心に触れることは言い出さず、会いたいと思った明確な理由も言わずに、心象を探り合うような会話と表情。
この時私は、恋はタイミングだといった橘さんの言葉を思い出していたにも関わらず…それを行動に移すことをしなかった。
気持ちが通じ合う一歩手前のこの独特な感じに酔っていたのかもしれない。
そしてそれに甘えていたのかもしれない。

