「でも!冬が終われば必ず春が来ます!」


気付けば声を出していた。


「この街には絶対、四季があるんです!全員に同じだけ、春も夏も秋もあるんです!」



早坂さんが驚いた顔で見ている。



「一人じゃ無理でも、どれだけ冬が寒くても、誰かと暖め合えれば…絶対に乗り越えられるんです!

だから…きゃっ!」



急に腕を引かれたと思ったら、体があったかくなった。



早坂さんに抱き締められてると気付いたのは数秒たってからだった。




どれぐらいたっただろうか。



10秒かもしれないし、5分かもしれない。
まともに考えられないくらい頭が混乱している。





「ありがとう、矢野さん。
…うん。今はそれがわかるよ。
だって、矢野さんに会えたから」




そういって更にぎゅっと力がこめられた。



………それ、どういう意味ですか?


聞きたいけど、聞けない。

ただただ混乱して、声が出なくて、だけどどうしようもなく嬉しくて。





今はただこのぬくもりを、手放したくなかった。