そっか。
お店のことを心配して、励ましに来てくれたのかな。
その気持ちが素直に嬉しかった。
「…今、みんなで頑張ってるんです。なんとかお店を立て直そうって。今までみたいに…絶対元通りにしようって」
早坂さんが優しい顔で聞いている。
「だから、私、…私、」
「俺さ」
泣きそうになっている私の頭に早坂さんの手のひらが乗った。
「初めてあの店に行った日から、何回かお店の前通って矢野さんのこと見てるんだ。
矢野さんはいつも笑顔で接客してて、ほんとに楽しそうで。その笑顔見てると、俺も仕事頑張ろうって…思うんだよ」
頭の上で、手のひらがポン、と跳ねる。
「早く、また矢野さんのあの笑顔が見たい。だから俺も信じてるよ」
頭を撫でられながら涙を流す。
諦めるって決めたのに、この手を待ち望んでいた気がする。
「…ありがとう…ございます」
そう言うと、にこっと笑ってくれた。
しばらくそうして頭を撫でてくれた。
私が落ちつくと、手が離れた。
「…聞いて欲しいことがあるんだ」
どきっとした。
「こないだの夜…見られちゃった、よな?」
これは、誤魔化せそうにない。
「あの、はい…」
すると早坂さんははあーっと息を吐いた。
その様子を見て、耐えきれなくなる。
「えっと、彼女いるんならそう言ってくれればよかったのに。私、邪魔しちゃいましたよね!」
言わないでおこうと思ってたことが口から漏れる。

