1番見られたくなかったのに。
その瞬間、矢野さんは逃げるように走っていってしまう。
…誤解されたくない。
「矢野さん!」
叫んだけど彼女は止まってくれない。
追いかけようにも、はるかに腕をがっしり掴まれている。
振り払うことも出来たけどそれをしなかったのは…
はるかが矢野さんの顔を覚え、危害を加えることが想像出来たからだ。
この女ならやりかねない。
追いかけるのを諦めた俺は、はるかに向き直る。
「いい加減にしてくれ!もう俺とお前とはなんの関係もないだろ!」
「い…いや!いやよ!私はずっと良だけを見てたのに!」
「俺はお前とヨリ戻すつもりもないし、話すこともない。何回も言ったはずだろ!」
「…どうして?
なんで私を見てくれないの!?」
「お前こそ、自分のしてきたこと忘れたとでも言うつもりかよ?」
低い声でそう言うと、はるかの肩がビクッと震えた。
「いいか。俺はお前を好きじゃない。
もう…やめにしてくれ。頼むから」
はるかが俺の腕を離した。
今にも泣きそうな顔で唖然と突っ立っている。
「お前ももう家に帰れ。そろそろ台風も来んぞ。じゃあな」
俺は一人家に帰った。

