次の日の朝。
ぼんやりとした顔で目を開ける。
あまり眠れなかった。
台風が来ていたから雨と風の音がすごかった。
今は雨はやんでいて空は明るい。
でも、もし静かな夜だったとしても眠れなかっただろう。
思いっきり寝てリセットしたかった。
昨日までの自分と今日からの自分に区切りを付けたかった。
携帯の画面を見ると、不在着信が入っていた。
早坂さんからだった。
気付かれてたんだやっぱり。
私と目が合った時に、私だとバレてたんだ。
何を言うために電話してきたのだろう。
”ごめん、彼女いないって言ったの嘘だったんだ”
とか?
”彼女が出来たからもう食事にいけないんだ”
とか?
…もう、前みたいに上手く会話する自信がないよ…。
ひたすらネガティブな思考に陥っていると、携帯が鳴った。
まさか、と思ったけど電話は橘さんからだった。
朝から珍しいな、と思いながら電話に出る。
「もしもし、おはようございます」
「もしもし矢野!?
大変なの!お店が………」
携帯を耳に押し付けながら必死に橘さんの声を頭で追う。
電話の向こうから橘さんの焦りが伝わって、声も震えているように感じる。
電話を切って、少しの間その場に呆然と立ち尽くしていた。

