「私は…ほら、恋愛ってたちじゃないし。彼氏欲しいとも思わないから」

「あ?あーあれか。過去になんかあったパターンか」

「ち、違うわよ。そうじゃなくて…」

「…?」

「私は矢野みたいに顔が可愛いわけでもないし、気も強いし仕事人間だし。どうせ彼氏なんか出来たって長続きしないの目に見えてるから。結婚願望もまったくないし」



静かな店内に沈黙が流れる。

シュウさんは黙ってカクテルを作り始めた。



「だからもう、私は…」

そしてそれは橘さんの前に置かれた。



「何これ?」

「俺からのサービス。カオリさん、カクテル言葉って知ってるか?」

「知ってるわよ。花言葉みたいなやつでしょ?それがなに……あ………」



目の前にはたった今作られたカシスソーダ。



「じゃあ、カシスソーダのカクテル言葉知ってるか?」

「………知らないわよ」

「あっそ」



橘さんはグラスを両手で包み込み、閉店まで大事にそれを飲み続けた。







”あなたは魅力的”