ぎょっとして、思わず振り向く。

「矢野さん。24歳、美容師。…可愛らしい人ね。良が今まで付き合った人達とはちょっと違うタイプね」

「お前、なんで…」

「なんで知ってるかって?ふふっ、内緒」



まさか。

恐れていたことがおこったのか?

そうすれば全て納得がいく。急に連絡がこなくなったことも…。



「…彼女に何した」

「ちょっと、何もしてないわよ」

「あの人に何かしてたら…」

はるかの肩がびくっと動いた。

「俺は絶対お前を許さない。どんな手を使っても俺たちの前から姿を消してもらう」

今までも同じことをされてきたけど…比べものにならない程、俺は腹を立てていた。それだけ俺にとって矢野さんは大事な人だ。

「ど…して。そんなにあの子が大事なの?」

俺がここまで怒ったのを初めて見たんだろう。はるかは泣きそうな顔になっていた。

「で、でも。あの子だってやっとお店が再開したんだし、今が大事な時期だと思うわ!いくら良だって、変に邪魔するわけにはいかないと思うけど!」

「やっとお店が再開した?なんでお前がそんなこと知ってる」

その瞬間はるかがあからさまに動揺した。
待て、確かこいつの親は…

「ち、違う!私は何もしてないわ!」

「ふざけんな!どれだけあの人が店のことを大切にしてるか知らねーくせに…いい加減にしろよ!お前の我儘でかき乱してんじゃねえよ!」