うそ…今の話、全部聞かれてたの?
店長、橘さん、岩佐くんの3人がそろってこっちを見ている。
すると橘さんがつかつかと歩いてきて…
「バカ矢野っ!」
そう言って抱きついてきた。
私の見間違いじゃなければ、その目は少し潤んでいたように見えた。
「あんた、隠し事もたいがいにしなさいよ!なんで真っ先に相談しないの!」
そして私の目もだんだんと潤んできた。
「矢野」
「てんちょ…」
「ごめんね、お店のことで色々悩ませたね」
「ちがっ…私が、私のせいで、店長のお店が…」
「ううん。矢野のせいじゃないわ。矢野は、お店の再開のために本当に色々してくれてた。それが無かったら再開はもっと遅れたと思うの。だからあれが最速だったのよ」
そう言った店長は優しく微笑んでいた。
「お店が再開したって、矢野さんがそんな元気ないんじゃなんか嫌っすよ。俺たちずっと一緒に頑張ってきたのに、なんでこんな時だけ輪から抜けるんすか」
「岩佐くん…」
「ようするに」
シュウさんが口を開いた。
「誰もお前のせいなんて思ってねえってことだよ」

