「で、矢野」

橘さんがずいっと乗り出してきた。

「え?な、なんですか…」

「あんた、どーなってんの?」

「な、なにがですか、なにもないですよ」

今までずっとその会話を避けてきてたのに、やっぱり橘さんにつかまってしまった。

「あんた最近、おかしいからさ。どうせなんかあったんでしょ?」

橘さんのその言葉に誰よりも反応したのはシュウさんだった。
どーゆうことだ、という顔でこっちを睨んでいる…気がする。

シュウさんにはこの間、良い感じだと言ってしまった。その時は嘘じゃなかったけど。

「おかしくないです、普通です!それより橘さん、グラス空いてますよ!」

「こら、司」

シュウさんがずいっと乗り出してきた。
まずい…これは逃げられないかも…。

「お前、どういうことだ。前に来た時は良い感じだって言ってただろ」

「え?そーなの?良かったじゃん!」

「これで矢野さんも久しぶりに彼氏持ちっすか。近々告白予定でもあるんすか」

「仕事場にまで幸せオーラ出さないでよー!」



…違う。
違うんだよ。
全部、全部終わったんだよ。



「矢野ー。聞いてないぞー!ひょっとしてもう付き合ってたり…」

「やめて下さい!」

私の声が店内に響き渡った。