恋愛奮闘記



それからお店は毎日忙しかった。

閉まっていた分を取り戻すように、店長も橘さんも岩佐くんも私も疲れを忘れて働いた。

「矢野、今のうちにお昼食べてきな。今日も最後まで予約詰まってるから今のうちだよ」

「そうですね、じゃあお先に頂きます!」

そんないつも通りの会話でさえ嬉しく感じるから不思議だ。

「今日は弁当?」

「いやー今日はそこのコンビニの担々麺です!おいしいやつ!」

「えっ!?ちょっと、お店に匂い充満させないでよ!こっちがお腹空く!」

「橘さんも買ってきたらいいじゃないですかー!」

「…そうしようかな」



平和だ。
こんな日々がずっと続いてほしい。

実際、無くしたくなかったものをいざ無くしてしまうと、身軽になった。
考えなきゃいけないことが減ったのと、無くしてしまったならもう怖くないのとがあるんだと思う。

この軽くなった身体で、これからお店のためにどこまでも動くんだ。それが今私がすべきこと。