「え…」

「俺のこと優しいって思ってくれたんなら、それは矢野さんだから。…わかってないなら言っとくけど、声聞きたいから電話するのなんて矢野さんにだけだから」



今この瞬間にわかった。
私達の気持ちは、しっかり通じ合っていた。私は早坂さんが好き。早坂さんも、きっと…



「…矢野さん。次に会ったとき、話があるんだ」

早坂さんが真剣な声で言う。

「もう今言っちゃおうかと思ったけど…やっぱりこういうのは、直接顔みて言いたい。だから、近々また誘うと思う。その時に、矢野さんの正直な気持ちを聞かせて欲しいんだ」



世の中は残酷だ。
上手くいかないことばっかり。



「わかりました。次に会ったとき、ちゃんとお話聞きますね?」

声が震えないように、涙に気付かれないように。

「うん。じゃあ…また連絡する。遅くにごめんな」





これが最後だ。

次に会うときなんて来ないのだ。

早坂さんの気持ちを聞くことは、もう出来ない。

さようなら。



電話を終えた私は1人泣いた。