好きになったわけ

ておい、前三つはともかく最後の一つはなんだよ。絶対おかしいだろ。

「ヒロ、お前……」

いや違うから、てかテツ、お前も調子のんな。

「なんだ一瀬、篠原と知り合いなのか。んじゃあちょうどいい。お前の隣を篠原にするか」

ええ!?そ、そりゃあ嬉しいけど、男子が発狂しますよ……僕は窓際の最後尾が席ですし。
それに篠原さんだって……と思い篠原さんの方を見ると、彼女は顔パアア!と輝かせていた。……どうやら隣がいいらしい。
まあ男子からは恨めしや〜と聞こえてこなくもないが、この際無視することにした。

「良かったです、一瀬くんが同じクラスで。全く知り合いがいなかったものですから」

僕の隣までやってくると彼女は顔を綻ばせてそう言った。そう言われると、こちらの方が照れてしまう。
思わずニマニマしていると、男子の恨めしい視線とは別の、鋭く突き刺さるような視線を僕は感じ取った。驚きそちらへ目をやると、その視線は僕が見ているのにもかかわらず、じーっとこちらを見てきた。
川崎閑(しずか)というのが、その眼力の持ち主だった。
篠原さんに負けず劣らず整った顔を持ち、美人か可愛いかで言えば間違いなく美人に分類される美少女。しかしどういう訳か、他人とあまり関わろうとせずいつも一匹狼状態。一ヶ月もすればクラスの方がその雰囲気になれてしまって、今では彼女に積極的に話しかける人はいない。