これでも好きなの





保健室に着くとすぐさまベッドに蒼生を寝かし、全身を冷やす作業が始まった。



相変わらず意識は戻ってこないようで、これはまずいと先生が救急車を呼んだ。



「もー……練習しすぎなんだよ、バカ。」


先生たちが慌ただしく動く中、小さくそう嘆いたあたしの言葉に、綾女ちゃんがぴくりと反応した。


「でも、仕方がないじゃん。大会、頑張りたいって気持ちが人一倍強いんだよ。」



……綾女ちゃん、知ってるよ。


この人がどれだけ陸上バカなのかなんて、そんなのとっくに知ってるよ。


でも、今回は本当に……バカだよ、蒼生。


こんだけたくさんの人を心配させてさ、綾女ちゃん……彼女にもそんな顔させちゃってさ。


やっぱり、蒼生には彼氏は務まらないんだよ。




……なんて、勝手に思ってみたりしたけど、結局あたしは、“彼女”な綾女ちゃんが羨ましいだけなんだろうね。