サヨナラからはじめよう

カチカチカチカチ････


どこからか規則的な音が聞こえてくる。

重い瞼を開けると遠くに時計が見えた。
音の主はあの壁時計なのだろう。


重い････
体も、頭も、全身が鉛のように重い。
何かに体を乗っ取られたんじゃないかと思うくらい、ひどいだるさだ。

私は一体どうしたというのだろうか。



「あ、気付きましたか？」


ぼーっと状況を考えようとしていたところで声がした。
目だけでその主を辿ると、部屋の入り口に司が立っていた。

「司････」

私が名前を呼ぶと、一瞬だけ驚いた顔を見せてそれから嬉しそうに笑った。


あぁ、私はきっとまだ夢の中にいるんだ。
司の目が昔と同じだから。
私のことが好きだって気持ちを溢れさせていたあの頃と同じ。
優しい優しい瞳で私を見つめている。