サヨナラからはじめよう

はぁっと溜息をつくと観念してぽつりぽつりと話し始めた。

「あの人は・・・・昔付き合ってた人」

「・・・前に言ってた人ですか?」

・・・あぁそっか。前に飲んだときに勢いで話したような気がする。

「うん。別れてから完全に関係を絶ってたから会うこともなかったんだけど・・・この前帰ったらマンションの前に倒れてて」

「え?」

「私も驚いたの。完全に彼の前からいなくなってもう3年も経ってたのに何で今頃?って。だから何が理由でも一切関わりをもつつもりはなかった。・・・でも彼、記憶がないらしくて・・・」

「・・・・は?」

中村君がが怪訝そうに顔を歪める。
そりゃそうだろう。私だってはじめは同じように思ったのだから。

「どうもそれが本当だってことがわかって。もちろん最初はそれでも追い返そうとしたんだけど・・・色々話してるうちにそれ以上突き放せなくなってしまって・・・」

「だから一緒に暮らしてるんですか?」

「誤解しないで。ほんの少しもやましいことはないし、顔を合わせることもほとんどない。それに、一週間だけって約束したから」