サヨナラからはじめよう

「涼子さん、顔あげて」

思いの外優しい声が降ってきて恐る恐る顔を上げる。

「全然気にしなくていいですから。さっきなんか本調子じゃなさそうだなって思ってたんです。だから無理してないかってこっちの方が気になってたくらいです。今日はもうこのまま帰りますか?」

その言葉に慌てて首を振る。

「だ、大丈夫!っていうか寝ちゃってほんっとにごめん!実は夕べちょっと遅くまで本読んでたせいで寝不足で・・・なんて理由にならないよね。ほんとごめんなさい」

「体調は大丈夫なんですか?」

「大丈夫!ぐっすり寝たから・・・・って、あ、ごめん・・」

マズイ!と思わず口を押さえた私をみて中村君は吹き出した。

「あははははは!涼子さんってほんと可愛いですね」

「かっ、かわかわ・・・・・???!」

「ぷっ、なんですかそれ。あぁほら、髪の毛食べてますよ」

そう言った中村君はスッと手を伸ばすと、
私の唇に手を寄せて貼り付いた髪の毛をちょちょいと取った。

ちょ、ちょ、ちょっと!!
スキンシップ過多じゃないですか???!!
なんか変なフェロモン出てるんですけど!!