サヨナラからはじめよう

「わかった。行こっか」

「・・・本当ですか?」

自分から誘っておきながら、中村君は驚いている。
なんでやねん。

「え、自分で誘っておきながらその反応は何?」

「あ、いえ。正直断られるかな~と思ってたからびっくりして」

「はは、何それ。じゃやめとく?」

「いえ、行きますっ!!」

速攻で答える彼がまるで子どものようだ。

「あはは、なんか今日の中村君面白いね。いつもは私の方がやられてばっかりなのに」

「え、人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。僕はいつでも優しいですよ」


このくだらないやりとりに救われる。
余計なことは何も考えたくない。

「じゃあ明日10時に駅前でいいですか?」

「了解」

この時の私は、家を空ける口実ができたことに心底ほっとしていた。