サヨナラからはじめよう

「涼子さん?」

目の前の声にハッとする。

「どうかしたんですか?気分でも悪いですか?」

「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。何だった?」

「あ、いえ・・・さっきのグラス、買わなくて良かったんですか?」


あの切り子のことか。
彼がそう思うのも当然だろう。
あの後30分程散々迷うだけ迷って、結局買わなかったのだから。

「いいの。どっちも凄く良かったけど、どっちにするかの決定打がなかったから」

「・・・僕がプレゼントできたらいいのに」

「・・・は?」


いきなり言い出した言葉の意味が全く分からない。

「僕がきちんと記憶があればお金も・・・多分あるだろうし、涼子さんにプレゼントできるのにって。こんな自分がふがいないです」


・・・何?
突然何をわけのわからないことを言ってるの?
それにその考えは根本から間違ってる。
だって・・・