サヨナラからはじめよう

「無理に飲まなくていいからね?」

「あっ、いえ、そうじゃなくて・・・なんか申し訳なくて。してもらうばかりで」


なるほど。確かにね。
持ち物が意味不明なカード一枚という状況。
着る物も食べるものも全て私がなんとか準備してあげた。
世間的に見ればヒモと変わらないだろう。

彼の今現在置かれた特殊な状況を除けば。

「別に気にしなくていいから。最終的に受け入れることにしたのは私自身なんだし、そこに関してあんたが負い目を感じる必要なんてないから」

「・・・・でも」

「あーもう、じゃあ今夜から野宿する?」

この一言に驚いた司はガバッと立ち上がり大慌てで声を張り上げた。

「えぇっ?!それは困ります、嫌ですっ!!」

「・・・ぷっ、でしょ?ならもうグダグダ考えるのなんてやめなって。はい座る座る」

「涼子さん・・・・・・ありがとうございます」

差し出されたメニューを控えめに受け取りながら、
あいつはどこか涙ぐんでいるようにも見えた。