サヨナラからはじめよう

「涼子さんが仕事に行ってる間、自分なりに街に出て何かわかることがないか探してきましたけど、なかなかうまくいかなくて・・・でも僕のことを知ってる涼子さんと一緒にいれば、いつもとは違う何かを掴めるんじゃないかって」

「そんなこと言われても困るよ。私には関係ない」

その言葉に一瞬傷ついた顔をする。
だがすぐに元の顔に戻ると言葉を続けた。

「涼子さんに迷惑をかけているのは充分わかってます。本当に申し訳ないと思ってます・・・。でも、僕が記憶をなくしてここにいたのには何か意味があると思うんです。その何かが少しも掴めないままここを出ていくのだけはどうしても嫌なんです。もうあと3日しかないし・・・」

話ながらどんどん声が小さくなるが、
司は決して自分から目を逸らそうとはしなかった。

自分を見つめるその瞳に足元がぐらつきそうになる。
目の前にいるのはアイツだけどアイツじゃない。
金輪際関わりたくないと思っていたはずのアイツがいない。

そう、まるでここにいるのは出会った頃の司そのもののようだ。