サヨナラからはじめよう

「あ、あのっ、もう一つだけ!」

しつこく食い下がってくる司を忌々しい顔で睨み付けた。
今度はアイツも引き下がることをしなかった。


「すみません、迷惑かけてるのはわかってるんですが時間がないので・・・」

「・・・・何が聞きたいの」

司は一瞬だけ足元を見るとすぐに顔を上げて口を開いた。

「涼子さんから見た僕ってどんな人間でしたか?」


その言葉に息が止まる。
どんな人間・・・?
それをあんたが私に聞くの?

今の話では私とあんたの関係は大学までで終わりになってる。
でも本当はそうじゃない。
その前後であんたに対する印象は真逆になってしまった。
じゃあ学生時代のあんたの姿をそのまま言えばいいってこと・・・・?

優しくて、硬派で、凄くかっこよかったって。



「・・・・・・手当たり次第女食ってた最低男だったよ」



顔も見ずにそう吐き捨てると今度こそ部屋へと戻った。

リビングではひどく傷ついた顔のあいつが立ち竦んでいたなんて知る由もなく。