サヨナラからはじめよう

「全く、もう少しじっくり時間をかけて振り向いてもらう予定だったのに、あなたのおかげで完全に予定が狂っちゃいましたよ。････なんて、いくら時間かけたところで涼子さんは良くも悪くもあなたから逃れることはできなかったでしょうね。最初から俺の入り込む余地なんてなかったんです」

「え･･･だって、･････涼子？」

司が混乱気味に私の顔を見る。
今度は私が気まずい番だけどちゃんと言わなきゃ。

「中村君とは何もないの。あの時、昔の事なんて棚に上げて綺麗事ばっかり言う司に頭にきて、つい嘘ついちゃった････ごめんなさい」

「･････え？じゃあ彼とは･･･」

信じられないとばかりに私と中村君を何度も何度も交互に見やる。

「体の関係どころか手を繋いだことすらありませんよ」

「･･･････涼子、本当に？」

「･････うん。ほんとにごめん」

気まずくて俯いた視線の先にぶるぶると震える司の拳が見えた。
もしかしたら怒ってるのだろうか？
あの時はそうすることでしか自分を守れなかったと言いたいところだけど、
嘘をついたのは事実なのだから何を言われてもそれはそれできちんと受け入れなきゃ。

次に放たれる言葉をギュッと目を瞑って覚悟した。