サヨナラからはじめよう

それから長くせずして、私たちも会社を出ることにした。
エレベーターを降りてエントランスへと向かう。

「これから会いに行くんですか?」

「う~ん、とりあえず一旦家に帰ってからにしようかな。実は私たちお互いの番号すら知らないんだよね」

「えっ、そうなんですか?」

「あはは、そうみたい・・・」

中村君が呆れた顔をしてる。そりゃそうだ。
うまくまとまったくせに連絡先は知らないってどういうことだって自分で思うもの。

「・・・・涼子さん、気付いてますか?」

「え?」

会社を出たところでおもむろに彼がそんなことを言ってきた。
何が?と思っている間に伸びてきた指が私のうなじの辺りをツンとつついた。
途端に背筋がゾクゾクする。

「ひっ!」

「ここ、キスマークついてますよ」

「えっ!!」

嘘でしょう?!こんなところにまで?後ろだから全く気付かなかった。
あ、あいつ~~~!!!
恥ずかしさのあまり一気に全身が真っ赤に染まっていく。

「きゃあっ?!」

と、その瞬間後ろから凄い力で体ごと引っ張られた。