サヨナラからはじめよう

「中村君の気持ちは本当に嬉しかった。今でもなんてもったいないことしてるんだろうって思う。････でも、それでも、私はあいつから離れられそうにないってわか
ったの。････好きなんだって、ようやく気が付いた」

「ちゃんと誤解は解けたんですか？」

「うん･･･」


私はそれから、過去にあったすれ違いの原因を彼に話した。予想外の話だったのか驚いていたけれど、どこかで妙に納得してるようにも見えた。

「････だから、どうしようもなく弱虫で卑怯で救いようのない男だけど、だからこそ私がいてあげなきゃ駄目だって思ったの。････彼には私じゃないと駄目なんだって。そして私もそんなあいつのことが････好きなんだ」

ずっと黙って聞いていた中村君は最後まで聞き終えるとフッと笑った。

「･･･なるほどね。これで全てが納得です。俺がずっとあの人に対して抱いてた違和感がこれで解消されましたよ。どう見ても涼子さん以外に心移りするような人には思えなかったんですよね。まぁそんなカラクリがあったとは予想もつきませんでしたけど」

ハハッと笑う彼が眩しい。
こんないい男に想われて、自分は何て幸せ者なんだろう。
そしてそんな彼を振るなんて、なんて罰当たりなんだろう。
でも、自分で決めたことだから。

私は司をもう一度信じるって。