サヨナラからはじめよう

「･･･なんて、もう涼子さんを見ればわかってるんですけどね」

「え？」

口元まで出かかっていた言葉が中村君によって遮られる。

「涼子さん、今日凄くいい顔してる。･･･俺が好きになった涼子さんの姿に戻ってる。それを見たら何があったかなんてすぐにわかっちゃいますよ」

「中村君･･･」

「あの人とうまくいったんでしょう？」

気まずい･･･なんて言うのは許されない。
きちんと彼には本当のことを言わなければ。
私は彼の目を見てゆっくり頷いた。

「やっぱりね。俺がどんなに頑張っても涼子さんにそんな顔させてあげられなかった。それがたった一晩で眩しいくらいに輝いてるんですもん。嫌でもわかりますって。････良かったですね、涼子さん」

そう言って彼は優しく笑った。
最後まで彼は何て優しいんだろう。
私が罪悪感を感じないように、負担にならないように、最後まで私のことを考えてくれている。そんな彼の優しさにまた涙が出そうになるけど、ちゃんと自分の言葉で伝えなきゃ。