サヨナラからはじめよう

結果的にどうなろうとも、司ときちんと向き合うことができたのは中村君のおかげだ。彼がいなければ私はずっと過去の呪縛から逃れられずにいただろう。
彼には感謝してもしきれない。

だからこそ時間をあけずにきちんと話をしなければいけない。

「中村君、今日少し時間いいかな・・・?」

「え?・・・・・わかりました。僕午後から外回りなんで、それから戻って来てからになりますけどいいですか?」

「もちろん」

「なるべく遅くならないようにします」

「いいの。こっちの都合に合わせてもらってるんだし。何も気にしないで」

「了解です」

きっと彼は私が何を話そうとしているのか、もうほとんどわかっているのだろう。
それでもこうしてきちんと向き合ってくれる。
本当になんてできた男なんだろう。
私はもしかしたらとんでもなくもったいないことをしているのかもしれない。

でも、それでも。
私の心が選んだのは彼じゃなかった。
どんなに格好良くても、人間性ができていても、アプローチを受けようとも、
私が好きなのは弱くて情けなくて、でも精一杯なあいつだって気付いてしまったから。

きちんと中村君には伝えなければ。
それが彼に対する誠意というものだろう。