サヨナラからはじめよう

「何これ・・・!」

エレベーターを降りて思わず動きが止まる。
イメージしていたような廊下ではなく、まるで日本庭園を思わせるようなその造りに息をするのも忘れるほど見入ってしまった。

ドクンドクンドクン・・・

まだ部屋に入ってもいないというのに、既に心臓が激しく脈打ち始めている。
エントランスからこの廊下まで、まだほんの少ししか見ていないというのに、
彼がどんな想いを込めてここを作ったのか、それが手に取るようにわかってきて胸がざわざわと落ち着かない。

見惚れるほどの綺麗な廊下を進んでいくとやがてドアが一つ現れた。
彼は今不在だと言っていた。
とはいえ念のためインターホンを押してみる。
・・・・・当然ながら返答はない。
少し震える手でカードをかざすと、ガチャッと鍵が開いたのがわかった。

ゆっくりと扉を開いていく。
中に足を一歩踏み入れた瞬間に木のほんのりとした香りが自分を包み込む。

「おじゃまします・・・」

小さな声でそう言うといよいよ部屋の中へと入っていった。