サヨナラからはじめよう

「あの、どうして私の名前を・・・?」

戸惑いながら私が聞くと、女性はパッと笑顔になってカウンターから出てきた。

「やっぱり!実はここができた時から南條さんに言われていたんです。三国涼子という女性が来たらいつでも通してください、って。帰宅された際には必ずあなたの来訪の有無を確認されるから、私もいつあなたがこちらを訪れるのか楽しみにしていたんです」

女性は嬉しそうにそんな話をしてくれた。
そんなことを彼が言っていたなんて・・・

「あの・・・ちなみにこちらのマンションっていつ完成したんですか?」

「完成したのは半年ほど前ですね。実際に住人の方が入ったのはそれから1ヶ月ほどしてからですけど、南條さんはこちらの設計を担当された方ですから、何度もこちらには来られていましたよ」


やっぱり・・・。
ここは彼が作ったマンションだったんだ。
外観から、エントランスの雰囲気から、絶対にそうじゃないかと思っていた。

それにしてもここができたときから私のことを伝えていただなんて。
彼と再会したのは4ヶ月ほど前だ。
それよりも前に既に私のことを話していたってこと・・・?