サヨナラからはじめよう

「それを見たときにこのままじゃ駄目だと思ったんです。いつまでも卑怯なことはできないって。あなたには全てのことを知った上で俺とのことを考えて欲しいんです」

「中村君・・・」

「・・・本音を言えば言いたくなかったですよ、こんなこと。どんな卑怯な手を使ってもいいからあなたを手に入れたい。そう思ってました。でも、それで上手くいったところで本当の意味であなたが俺を見てくれることはないだろうなって」

中村君は自嘲気味に笑った。

彼の想いが痛いほどに伝わってくる。
全くそんな素振りは見せなかったけれど、彼は彼でずっと悩んでいたのだろう。
それぞれの思いが交錯する中で、私にできることは一体何なんだろうか。

「涼子さん、あの日からあの人に会ってないんですよね?」

「・・・うん」

「俺とのことをどうするかも含めて、一度きちんと彼と向き合った方がいいんじゃないですか?このままでいても涼子さんは一生吹っ切れることはないでしょう?それならどういう結論を迎えようと一度言いたいことを全部ぶちまけたらどうですか。たとえあなたが最後にあの人を選んだとしても・・・俺は涼子さんに自分の心と向き合って欲しいと思ってます」

中村君がそこまで言うと、気が付けば自分の目から涙が零れ落ちていた。
自分の意思なんて関係なく、ポロポロと次から次に止めどなく溢れる。