サヨナラからはじめよう

「俺は間違ってないって自信がありました。実際あの人が現れてからの涼子さんはずっと苦しそうでしたし、どういう経緯があれ、あなたが苦しんでるのは見たくなかった。だから、彼がいなくなればそのうち涼子さんもまた元気になってくれるだろうって・・・そう思ってました。・・・でも」

中村君は私の顔を見つめた。なんだか今にも泣きそうな顔で。

「どれだけ時間が経ってもあなたはずっと苦しそうだった。あの人がいてもいなくても。その苦しみを俺が取り除けたらってずっと思ってました。・・・でも、最近自分の心が言うんです。お前にあの人のことをなんだかんだ偉そうに責める資格があるのかって。
結局、俺も涼子さんを騙して自分に振り向かせようとしているだけだって。そんな卑怯なやり方であなたの気持ちを振り向かせたって・・・・意味がない」

「中村君・・・」

「涼子さん、昨日あの雑誌見たんですよね?」

「え?」

「・・・あの人が載ってる雑誌を」

ドキン
彼は昨日私が齋藤さんからあの雑誌を渡されているのを見ていたのだろう。
私はゆっくりと頷いた。

「・・・・・うん」