サヨナラからはじめよう

「その人のことを話している彼は本当に幸せそうだった。あれだけ人を好きになることを拒絶していた彼をそこまで変えてしまう女性ってどんな人なんだろうって私はずっと興味がありました。････涼子さん、あなたのことです」

「･････」


何も言葉にできない。
彼が私に告白してきたとき、一体どんな気持ちだったのか。
彼にとってはどれだけの勇気を必要とすることだったのか、
私は考えたこともなかった。


「告白がＯＫだったときの彼の狂喜乱舞っぷりは･･･もう今思い出しても凄かったんですよ。あなたに見せたかったくらいです」

カナさんはくすくす笑って話す。
･･･だがすぐにその顔が真顔に戻る。

「････でもいざあなたを手に入れたら、彼は幸せと共に底知れない恐怖も抱えるようになってしまった」

「･････どういうことですか？」

「今手にしている幸せがいつかなくなってしまうんじゃないかって、あなたが他の男の所に行ってしまうんじゃないか、そんな猜疑心に苛まれていったんです。
････だから彼はあなたの心を試した」

「それって････」

私の顔を見るとカナさんは静かに頷いた。

「そうです。彼が浮気することであなたの気持ちが自分にあるのかを確かめようとした」