「・・・・認めたくないけどそういうことなんだと思う。かなりのトラウマになってる」

「でも一生その男に縛り付けられて生きていくの?そんなのバカらしいじゃない。中村は本気なんだし、一度向き合ってみれば?」

「・・・・」


確かに菜摘の言うとおりだ。
踏み出すのが怖いからと言ってこのまま一生一人で生きていくのか?
正直それは悲しすぎる。
私だって人並みに結婚願望を持っていた。

・・・でもどうしても今はその気になれない。

「まぁ本人が待つって言ってるんだから好きにさせてやればいいんじゃない?」

「・・・うん・・・」






「三国涼子さんですか?」

「え?」

二人で会社のエントランスを出たところでふとどこからか声をかけられた。
きょろきょろと周りを見ると、自分を呼んだらしき女性が少し先に立っていた。
私が立ち止まるとこちらへ近付いてくる。