サヨナラからはじめよう

「涼子さん、なんか凄くやつれてませんか？」


週明けの会社で、隣に座る後輩に突然そう言われた。

「えっ、何か出てる？」

慌てて顔を手で覆う。
後輩はじっと私の顔を見つめると、じりじりと接近してきた。

「ち、ちょっと、中村君･･･？」

ち、近い近い近いっ！！
イケメンオーラが半端ないあんたがそんなに近づいたらやばいんだって！
金メダリストもびっくりなイナバウアーで必死に逃げる。

中村はなおも追いかけてきて顔を接近させると、
覗き込むように指さしした。

「クマ」

「熊？」

「ぷっ、違いますよ。目の下のクマ、凄いことになってますよ？」

「あ、あぁクマね。･･･ちょっと映画見すぎて寝不足なのよ。っていうか、近いから！もうわかったから離れて！」

慌てふためく私を尻目にこの男は余裕綽々な態度で笑いながらようやく離れていく。
くっそ～！！中村め。
4つも年下のくせに毎度毎度生意気なんだよっ！