見ると今にも泣き出しそうなほど悲しげな顔をしている。
ズキンとこちらの胸まで痛くなる。

「僕は・・・そんなにあなたにひどいことをしたんですか・・・?」

「・・・」

その通りよ。
あなたはとてつもないろくでなしの極悪人よ!!
そう言ってやりたいはずなのに、
あの顔を見ていたら途端に何も言えなくなってしまう。
どうして・・・


「本当にすみませんでした・・・」

項垂れるように頭を下げたアイツはそのまま踵を返して出ていこうとする。

「ちょっと、これからどうするつもりっ?何も持ってないんでしょう!」

私はバカ?
どうして声をかけちゃうのよ。
そのまま放り出せばいいだけでしょう?
さっきまでその気満々だったじゃない。
アイツがこれからどうなろうと知ったこっちゃないんでしょう?

それなのに・・・
何故無意識のうちに声をかけてしまうの。

「・・・わかりません。でも目と耳と口さえあればとりあえず何とかなると思います。・・・ありがとうございました。色々ご迷惑をかけてすみません。・・・さようなら」

そう言ってドアノブに手をかけた。