サヨナラからはじめよう



『カナさんも待ってますよ』


その言葉が頭をよぎる。


カナさん・・・・・?
カナ・・・・・

その時、忌々しい過去が一気にフラッシュバックしてきた。


『カナ』


それは司が浮気する度に出てくる名前だった。
メールや電話には決まって彼女の名前があった。

司の・・・・浮気相手だった人だ。


・・・・違う。
さっきの会話から考えたら浮気相手なんかじゃない。
ずっと・・・きっとずっと関係は続いてるんだ。
そうだ、『カナさん』はあいつの本命だったんだ。


遊ばれたのは私。


今頃になってようやくそのことに気付いただけの話。



「ははっ」




今さらこんなに惨めな現実を突きつけられるなんて。
もう笑うしかなかった。