サヨナラからはじめよう

マンションの最寄り駅にある洋菓子店でケーキを買って帰ることにした。

店内に入ると色とりどりのスイーツが目に入る。

「ケーキなんていつぶりだろう・・・・」


・・・あいつと付き合ってた時以来だ。
司はスイーツが好きな男だった。
だから食後のデザートに一緒に食べることも少なくなかった。
別れてからは思い出したくもないと、食べることすらなくなってたんだ。

封印していた記憶が次々に蘇ってくる。

・・・・もう過去のことだ。
今さらどうこうなる話でもない。

「イチゴのショートケーキ2つください」

今日は余計なことは忘れて楽しく終わりたい。
私は笑顔で店員さんに注文した。


店を出るとマンションまでの道のりを歩く。

駅から少し離れたところで見覚えのある人影が見えた。


「司・・・?」


少し先に両手に買い物袋をぶら下げた司がいた。