サヨナラからはじめよう

「私好みかぁ~。見てみたかったな」

私の感性を知り尽くしている齋藤さんが言うくらいだから、余程ドストライクだったに違いない。次に会うまでの楽しみが増えた。

「さぁ~、今日はこれで帰るかぁ!」

う~んと背伸びをして息を吐く。
時計を見たら5時を回ったところだった。
いつも早くても7時過ぎの帰宅だから、今日は随分早く帰れることになる。

今日・・・・
そこまで考えてこの後に起こることを思い出す。

そうだ、司の話を聞かなければならないのだ。

最後になるのだから、気持ちよく別れたい。
それに今日の仕事がうまくいったのも、一つはあいつのおかげでもある。

「世話もしたけど私も世話になったし、今日はデザートでも買っていってやるか・・・」

思えば不思議な縁だったけど、最後くらいスッキリ終わりたいのが本音だ。
よし、時間もあることだしデザートを買っていこう。


・・・・あいつの大好きだったショートケーキを。