サヨナラからはじめよう

「この前雑誌を見てて絶対三国さんが好きそうな建築デザインがあったのよね」

「え、そうなんですか？」

インテリアをデザインする上で、まずその土台となる建築部分との相性は大切だ。いくらインテリアだけ好みにしても、根本が合わなければ理想のデザインは完成しない。

「私もたまたま見かけただけだったんだけど、見た瞬間絶対あなたが飛びつくようなデザインだわ～って思ったくらいだもの」

「へぇ～、どんなのだろう。見てみたいですね」

「････あ、もしかしたら荷物の中にその雑誌が入ってるかも」

そう言って齋藤さんはいくつかあるバッグの中を探り始めた。
その時ドアがノックされ、社員と思われる人が顔を覗かせた。

「齋藤さん、三股さんからお電話入ってますけど････」

「あっ、いっけない、忘れてた！三国さんごめんなさい、雑誌はまた今度でいい？」

「もちろんです。またよろしくお願いします」

「こちらこそよ。じゃあ今日はお疲れ様！」

「お疲れ様でした」

そう言うと齋藤さんは慌ただしく部屋を後にした。