男はポケットに手を入れると、取り出した物をおずおずと差し出した。

「･･･何これ。カード･･･？っていうかカードキー？」

「入っていたのはこれだけでした」

「嘘でしょ？携帯は？スマホは？財布は？」

問いかけに無言で首を振るだけ。
唯一の所持品がカードキーって･･･
そもそもどこの鍵なのかも全くわからない。

「こう言っちゃなんだけど、女と一緒にいたんじゃないの？ホテルかどっかでもめて追い出されたとか」

「それはありません！！」

ずっと弱々しかった態度が一変、強い口調ではっきりと否定する。
記憶がないくせに否定できる理由が全く理解できない。
なんだか腹が立ってきた。

「何もわからないくせになんで否定できるのよ！」

「上手く言えないけど自分の細胞がそれだけはないって言ってるんです！！」


････はぁ～～？？？？
細胞だと～？ふざけるな！！
むしろお前の細胞はそれしかないんだよっ！！！
怒りのボルテージは上昇し続ける。

「あのさ、はっきり言わせてもらうけど、あんたはそういう人間なんだよ。女にとてつもなくだらしないの。だから私が言ってることは適当でもなんでもなくて事実を根拠に言ってるの！！」