サヨナラからはじめよう

「準備できましたか？じゃあそこに座ってくださいね」

支度を終えてリビングに行くとニコニコ顔で食事の支度をする司がいた。
言われたとおりにテーブルにつく。
司は病み上がりの私に重すぎないように、卵雑炊を準備してくれていた。
どこまで気配りの男なんだ。

････っていうかどう考えてもこの構図はおかしくないか？
一体どっちが家の主なんだとつっこみたくなるのは当然だろう。

なんだかんだで司がうちに転がり込んできてから10日。
すっかりこの家に馴染んでしまっている。
別れてから引っ越した場所だからあいつにとっても初めての場所だというのに。

「はい、ブツブツ言ってないで食べてくださいね」

カッチーン！
私が何も言わないのをいいことに調子に乗ってないか？
でも無駄な労力をつかってまた具合が悪くなるのは勘弁だ。
言いたい言葉をグッと飲み込んで雑炊を口に含んだ。

「････おいしい･･･！」

「本当ですか？良かったです。まだがっつりしたものは胃が受け付けないと思って雑炊にしたんですよ」

「･･･昔より腕が上がってるじゃん」

「え？何か言いましたか？」

「何でもない」