サヨナラからはじめよう

枕をどかしたあいつはひどく楽しそうな顔で笑っていた。

「わかりました。じゃあほんとにゆっくり休んでくださいね」

そう言うとすんなり部屋から出て行こうとドアに向かった。
そしてノブに手をかけた瞬間もう一度振り返る。

「僕はどこにも行きませんから。・・・だからいつでも呼んでくださいね?涼子さん」

最後にそう言い残していくと、今度こそ本当に部屋から出て行った。



な、なんなんだなんなんだ一体これは?!
あいつに一体何があったというのだ?
記憶が戻ったのかとも思ったけれど、昔のあいつともどこか違う。
一体あれは誰なの?

・・・そして私も一体どうしちゃったの?
あんな奴にペースを持って行かれっぱなしで完全に振り回されてるではないか。
さっきから心臓がバクバクしっぱなしでおさまらない。
そもそもなんであんな奴にドキドキしてるんだよ!

おかしい。
何もかもがおかしい。


・・・・あ、もう駄目だ。
これ以上考えてたら頭がクラクラしてくる。
また仕事を休むなんてことはもうできない。


私は混乱する思考を無理矢理停止させて布団の中へと潜り込んだ。
予想に反して眠りはすぐに訪れた。