「あ、・・・・ありがとう。なんだかんだで助かったわ」

気まずいけれどお世話になったのは事実だ。
彼がいなかったらあのままどうなっていたかわからない。
きちんとお礼を言うべきことは言わなければ。

司は私の言葉に照れくさそうに、だけど凄く嬉しそうに微笑んだ。

「当然のことをしただけですよ。それにこちらこそ本当は昨日出ていかなければならないのに残ってるんですから、お互い様です」

あ、そういえばそうだった。昨日が約束の期限だったのだ。
まさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。
完全に想定外だ。

「そのことなんですけど」

考えを巡らせているとおもむろに司が口を開いた。

「僕はまだ出ていきません」

「・・・・・・・は?」

予測だにしないことを言われて目が点になる。
出ていかないって・・・ふざけてるの?
だが見上げた司の顔は真剣だ。

「まず、涼子さんの体調が完全に戻るまではお世話させてください」

「な、何言って・・・・」