不可解な事件に対し、犯人が見つからないことも重なって、大学は得体の知れない不穏な空気が蔓延していた。



「松村さん、俺暇だし家まで送ろうか」



ここぞとばかりに幸治が身を乗り出す。


「そのまま家まで上がりこまれたらいやだから、遠慮しとく」


笑顔でピシャリと言い渡す沙雪にさすがの幸治も苦笑いだ。





「百合さん、無事だといいけど…」


そうは言ったものの、もしかして彼女はもうこの世にいないんじゃないかという気さえしてくる。



きっと、そう考えているのは俺だけではない。


いや、この大学の人は嫌でもこの間の事件を彷彿させるだろう。

そして怯えるのだ。


「次は自分では」と。