ミーンミンミン…



「あっちーーー…」



熱い。

熱すぎる。


8月に入ってまだまだ夏期休業中の大学だが、俺は毎日のようにここに訪れていた。

しかしこの時間にくるのは久々だ。


周りには部活動にきた学生がちらほらと見かけるだけ。

そりゃそうだ。

まだ朝の8時だ。



まだ頂点に達していない太陽が、ものすごい熱エネルギーを降り注いできている。


しかも里村研究室は、校門からひたすら歩かないと到着しない。


まさに俺は絶体絶命。

これは到達するまでに全身から汗に水分を持っていかれて干涸びるか、頭上の高エネルギー体に遠隔照射されて干涸びるかのどちらかだ。




くそっ。



こうなったのも自分が悪い。



昨日いい気分で部屋に戻り、シャワーを浴びた。


さて寝よう、と思いベッドに潜り込む。


そこで俺は重大なことに気づいた。



「俺…あのシャーレ、ちゃんとインキュベータに入れたっけ…」


陽世子の部屋に行く前に、残っていた実験をささっとこなしてきていたつもりだった。


しかし、今になってそのことを思い出す。



最後に触った、あのF−08のシャーレ…

あれ、俺どうしたっけ。


確か、誰かからメールが来てそのときに陽世子の集会のこと思い出して急いで準備したような。


いやだがしかし、俺がシャーレを忘れるなんてそんな凡ミスを侵すなんて。


いや、俺は所詮一般人だ。

凡ミスをしてもなんら不思議はない。



そのことが気になりすぎて、こんな朝早くに大学にくる羽目になった。


だって、もしあのシャーレを俺が常温放置していたら…

せっかく今までやってきた実験を、もう一度やらなければならなくなる。




「それだけは…勘弁、だ」


そのことを考えると恐ろしくてしょうがない。

俺ははやる気持ちで研究室へ向かった。