「お前、名前は?」

「わかん…ない…」

「まじかよ。」

「よく覚えてなくって…」

「俺はハイネ。何か覚えてることないの?」

「ない…」

「俺は生前の記憶なら少し持ってる。お前みたいに全部忘れる奴には初めて会うけど。」

「そっか…」

(ん…?)



ふと疑問が湧いた。


「生前って…?」

「え、なに。気付いてないの?」

「死んじゃったの…?わたし…」



本当は夢であることに期待していた。
起きたら家族と自分の家があると何処かで願っていた。
なのに…
そんな気持ちが一気に涙になって押し寄せてくる。