「たまたま目の前にいたお婆ちゃんの鞄から、ねこが飛び出してホームに落っこっちまったんだよ。で、それをお前が助けに行った。」

「わ…たしが…?なんで?ねこなんか…」

「まぁ、今のお前の感覚からすれば"ねこなんか"かもしれねぇが、あの時のお前はねこを助ける以外に選択肢が無いような顔をしてたと思うけど。」

「そ、それで…?ねこはどうしたの…?」

「あぁ、勿論助かったよ。お前のおかげで。でも助けたねこをお婆さんに手渡した時にはもう電車はすぐそこだった。で、足がすくんだお前を……お前が、そのままひかれたって訳。」

「そ、そうなんだ…」

「まぁ、安心しろよ。大罪犯して死んでない奴なら1年くらいで迎えは来るはずだから。」

「ハイネ君は、なんで死んじゃったの…?」

「ハイネ君とか寒いからやめて。ハイネでいいよ。俺はバスに普通にひかれただけ。」

「"だけ"って…。あれ?ハイネって日本人だよね?ハーフ?」

「ちげーよ。言っただろ。俺は生前の名前覚えてないから、これは自分でつけた名前。お前も忘れたんなら自分でつければ?」

「じゃあ…えっと…」