「そういえば、お昼ごはんも食べてなかったね」


麻紀も、思い出したようにお腹をさすっている。


「腹減ったな」


一番頑張ってくれた流川も、ふうっと息を吐きながら床に腰を下ろした。


「何か買ってくる?」


「それも面倒だね」


「冷蔵庫の中には何にも入ってないしなぁ」


「出前でも取る? 蕎麦とか」


「あ、それいいかも。引っ越し蕎麦!」


なんて話をしていると、


『ピンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポーン』


部屋に呼び鈴が響いた。


「あれ? 誰か来た」


「まさかの出前? 流川、ひょっとして頼んでくれた?」


「んなわけねーだろ。今の今まで一緒にここで話してたろーが」


「じゃあ誰だろ?」



立ち上がって玄関を開くと、



「久しぶりだね、唯衣ちゃん」


「あ、後藤さん!」



……は、50代で独身の、大仏頭のおばちゃん。

私の部屋の、お隣さんだ。