「ナマイキに笑いやがって」
「だ、だってオモシロかったんだもん」
「まだ言うか」
「だって、」
「口答えすんな。ふさぐぞ、その口」
「……」
「嫌なら逃げるんだな」
……ドキドキドキドキ……
試すような口調に、高鳴る心臓の音。
……このシチュエーション、出会ったあの夏と、同じだ。
あのとき、私にはまだ要くんがいて、それを流川も承知していて。
だけど、どんどん惹かれていって。
この旅館、畳の香り、近すぎる流川の熱。
今みたいにふたりとも浴衣姿で、お互いにどうしたらいいのかわからないまま、しばらくの間、見つめ合っていたっけ。
重なった胸と胸が苦しくて。
あと数センチで触れそうになった唇は、仲居さんの登場によって離れたんだよね。
だけど今は……


