ぎゅっと、ほっぺたを下に撫でおろしたけれど。時すでに遅し。
「さっきより笑ってんじゃねーか、お前」
「いや、笑ってません」
「見え見えのウソをつくな。広がってるぞ、鼻の穴」
「こ、これは空気をたくさん取り込もうと思いまして……」
「なんだそれ。バカ」
「ちょ、ちょっと笑っただけじゃんっ」
「そういえば、風呂に入る前も笑ってたよなぁ? 覚えてろって言ったよなぁ?」
じりじり……
にじり寄ってくる流川に。
「ひっ…っ」
立ち上がって逃げようとするも、浴衣が絡まってうまくいかない。
2メートル、1メートル、70センチ……
畳に両手をついて、ゆっくり近づいてくる流川は、まるで獲物を狙った肉食獣のようで。
「わ、わわわっ……」
本気で噛みつかれそうなんですけどっ。


