「ななな、何言ってんの~、仲居さん。幽霊なんて……あははは」
私、その手の話が大の苦手。
背中に悪寒が走ったのをごまかすために笑い飛ばしてみたけれど、
仲居さんはいたってマジメな顔つきだ。しかも両手はぶらんとしたまま。
「仲居さん……、そ、そのポーズやめてくんない?」
「聞いたことありませんか? この旅館で、女の人の幽霊を見たことがある人がいるって」
「お、女の人の……幽霊?」
「はい、女の人の……幽霊」
そ、そういえば……夏にみんなで来た時も、麻紀がそんな話をしていたような……。
なんだっけ? え~っと、イケメン好きの女の人の幽霊が、お気に入りの男の人がいる部屋に現れるとかなんとか……。
「……それって、ただの噂話……だよね?」
「いえ、ガチらしいです。あ、最近覚えました、ガチ。お客さんに教えてもらったんです、ガチ。ホントとか本気とかいう意味なんですよね、ガチ」
「うん、そうだね、ガチ」
って、つられるな、自分。


